2025.3.24
ニュース3/11、第11回医薬品開発研究センターシンポジウムを開催しました
2025年3月11日(火)、東北大学「社会にインパクトある研究」(B5ヒトの医薬品)の支援のもと、東北大学薬学部・薬学研究科 医薬品開発研究センター(RCPD)および未来型医療創成センター(INGEM)、東北大学未来型医療創造卓越大学院プログラムの共催、オープンイノベーション事業戦略機構の後援で、第11回医薬品開発研究センターシンポジウムをハイブリッドで開催しました。
本シンポジウムは、「アカデミア創薬の最先端」というテーマを掲げ、低分子から中分子、ペプチド、天然物の合成生物学研究、糖鎖制御に基づく抗体医薬開発、エピジェネティクス創薬、インシリコ創薬までアカデミアにおいて推進されている最新の創薬研究について取り上げました。シンポジストとして、静岡大学総合科学技術研究科の鳴海 哲夫准教授、東北大学薬学研究科の浅井 禎吾教授、星薬科大学の眞鍋 史乃教授(本学薬学研究科とのクロスアポイントメント)、大阪大学産業科学研究所の鈴木 孝禎教授、筑波大学医学医療系の広川 貴次教授にご登壇いただき、独創的な研究成果を熱く語っていただきました。今回も、薬学研究科のみならず、他部局、他大学、製薬会社等企業から多くの申込みがあり、会場でも70人を超える教員、学生にお集まりいただきました。
鳴海 哲夫准教授には、生物活性物質の分子構造と生体側の分子認識の関係性についての興味深い事例と創薬化学の重要な戦略となっている生物学的等価性の概念について解説いただいたあと、独創的な着眼点から設計したペプチド主鎖改変、すなわち「アルケン型ペプチド結合等価体」がもたらす生体内安定性の向上と活性コンフォメーション固定化による生物活性制御に関する数々の最新の成果を発表いただきました。
鳴海 哲夫准教授
浅井 禎吾教授には、医薬資源として重要な役割を果たしてきた天然有機化合物に潜在する有用性と新たな可能性を拡張する手法として注目を集めている合成生物学的手法の概念を解説いただいたあと、研究室で推進している天然物生合成に関わる遺伝子を有する糸状菌のゲノムマイニングと生合成に与る酵素の機能と構造の予測、そして麹菌による異種発現を組み合わせた新規天然物および所望の天然物の創製と応用についてお話しいただきました。
浅井 禎吾教授
眞鍋 史乃教授には、その不均一性のため困難となっていたタンパク質に結合した糖鎖の生物学的な機能解析という課題について、精密有機化学的手法によって均一な構造制御と系統的合成を実現し、これより可能となった糖鎖均一抗体の系統的作製、糖鎖連結均一構造抗体・薬物複合体の機能評価に関する最新の成果とともに、次世代創薬モダリティとして近年注目を集めている抗体α線治療の現状と展望についてお話しいただきました。
眞鍋 史乃教授
鈴木 孝禎教授には、ヒストンのメチル化やアセチル化などの後天的な化学修飾を経た遺伝子発現制御機構であるエピジェネティクスの制御に基づく創薬の歴史的な展望を紹介いただいたあと、従来型の触媒活性阻害を狙った創薬とは一線を画する新戦略として、エピジェネティクタンパク質複合体の標的とする阻害薬開発研究の展開と成功事例について、その背後にあった紆余曲折のストーリーとともにお話しいただきました。
鈴木 孝禎教授
広川 貴次教授には、分子シミュレーションやバイオ・ケモインフォマティクスを駆使したインシリコ創薬の最先端の成果について医薬分子とその標的分子の相互作用・機能発現機序を示したリアリティーに迫る動画をふんだんに交えて紹介いただくとともに、AlphaFoldを活用するタンパク複合体の構造予測における課題と展望についてお話しいただきました。
広川 貴次教授
今回ご講演いただいたアカデミア創薬における最先端の知見は、東北大学における創薬研究を大きく推進するものであり、これらの手法・技術・概念をもとに、医薬品開発研究センターと、他部局、企業との連携がいっそう促進されるものと考えられます。
東北大学薬学部・薬学研究科 医薬品開発研究センター(RCPD)との連携をご希望される先生方は、お気軽にご相談いただければと思います。
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