2025.10.23
成果INGEMが支援するクライオ電子顕微鏡を用いた研究の論文が掲載されました
当センターで導入しているクライオ電子顕微鏡を用いた、自治医科大学の山本 直樹先生ら研究グループによる研究成果がBiochimica et Biophysica Acta (BBA) – Proteins and Proteomics誌に掲載されました。
プロトフィブリルは、アミロイド関連疾患に対する効果的な治療戦略を探る上で重要な中間体ですが、その構造的特徴はこれまでのところ大部分が不明確です。本研究では、クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)を用いてアミロイド・プロトフィブリルの分子間βシート構造を直接可視化しました。
インスリン由来ペプチドが形成するプロトフィブリルを解析したところ、その中心部に4.7Å間隔で規則的に配置された線状構造が見られ、その周囲をぼやけた領域が取り囲んでいました。この間隔は、βストランド間の水素結合距離と一致するものでした。
この観察結果に基づき、短いβストランドが中心部でβシートのコアを形成し、外側のぼやけた領域はランダムコイル構造から成るというモデルを提案しました。この構造は、βシートが全体に広がる成熟アミロイド線維とは異なり、プロトフィブリルにおける部分的なβシート形成が、曲がりくねったヌードル状の外観を呈する原因であることを示唆しています。
今回、同研究グループは、プロトフィブリルのような一見柔軟な構造を可視化するうえでクライオ電子顕微鏡が強力なツールであることを示すとともに、プロトフィブリルのβシート構造を標的とした診断・治療薬の合理的設計に向けた概念的枠組みを確立しました。
本研究は、自治医科大学の山本 直樹先生が、当センターで導入しているクライオ電子顕微鏡の装置利用支援にお申込みいただき、成果として発展したものです。
書誌情報
タイトル:Direct cryo-EM visualization of the β-sheet structure in curved amyloid protofibril
著者名:Naoki Yamamoto, Jin Inoue, Ritsumi Saito, Kei Nanatani, Ai Takahashi, Seizo Koshiba, Ryo Kanno
掲載誌:Biochimica et Biophysica Acta (BBA) – Proteins and Proteomics
掲載日:2025年10月16日