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2022.12.6

成果

5-FU系抗がん剤の副作用発現に関連する薬物代謝酵素遺伝子多型の機能解析に関する論文がDrug Metabolism and Disposition誌に掲載されました

当センターの平塚真弘准教授、前川正充准教授、平澤典保教授(遺伝子創薬グループ)、菱沼英史助教、齋藤さかえ講師(クリニカルフェノームグループ)、田中良和教授(生体高分子構造解析グループ)、木下賢吾教授(副センター長)らのグループ連携研究によって、5-フルオロウラシル(5-FU)系抗がん剤の薬物代謝酵素の遺伝子多型に伴う酵素機能解析に関する論文がDrug Metabolism and Disposition誌に掲載されました。

 

がんの治療に使われる5-FU系抗がん剤は、投与患者の約30%に重篤な副作用が発現すると報告されています。その一因として薬物代謝酵素であるジヒドロピリミジナーゼ(DHPase)をコードするDPYS遺伝子多型が知られており、遺伝子多型に伴うアミノ酸置換によってDHPaseの機能が低下する場合、重篤な副作用が発現する可能性が極めて高くなります。これまで、5-FU系抗がん剤による重篤な副作用発現を予測する遺伝子多型マーカーが既に欧米のガイドラインに記載されていますが、遺伝子多型の部位や頻度には著しい民族集団差があり、日本人を含めた東アジア人集団では、5-FU系抗がん剤の副作用発現を予測できる遺伝子多型マーカーがありませんでした。

これまでも菱沼助教と平塚准教授らのグループでは、様々な民族集団で同定されたDPYS遺伝子多型に由来するバリアントDHPase酵素を作製し、酵素と基質を反応させて代謝物の生成量を測定することで、その酵素機能の変化を網羅的に解析し、機能消失あるいは低下型のバリアントを特定するとともに、酵素活性発現には多量体形成が重要であることを明らかにしてきました。

さらに本研究では、日本人集団に特異的なDPYS遺伝子多型マーカーを特定するため、ToMMoによる日本人3,554人の全ゲノム解析で同定された12種類のDPYS遺伝子多型がDHPase酵素の機能に与える影響を、遺伝子組換え酵素タンパク質を用いて解析しました。その結果、9種の遺伝子多型で酵素活性が消失または低下することを明らかにしました。また、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いることにより、ヒトDHPaseの酵素活性発現に必要な多量体が四量体であることを証明し、それらの形成維持が酵素活性の発現に極めて重要であることを明らかにしました。

本研究の成果は、5-FU系抗がん剤で重篤な副作用が発現する可能性が高い遺伝子多型を有している患者を投薬前に特定することで、最も効果的かつ安全性の高い薬剤選択や投与設計を行う個別化抗がん剤治療への応用が期待されます (図)。

ID214_pressrelease.JPG (190 KB)

本論文は、2022年11月22日にDrug Metabolism and Disposition誌の電子版に掲載されました。

プレスリリース詳細

 

書誌情報

タイトル:Functional characterization of 12 dihydropyrimidinase allelic variants in Japanese individuals for the prediction of 5-fluorouracil treatment-related toxicity
著者名:Eiji Hishinuma, Yoko Narita, Evelyn Marie Gutiérrez Rico, Akiko Ueda, Kai Obuchi, Yoshikazu Tanaka, Sakae Saito, Shu Tadaka, Kengo Kinoshita, Masamitsu Maekawa, Nariyasu Mano, Tomoki Nakayoshi, Akifumi Oda, Noriyasu Hirasawa, Masahiro Hiratsuka
掲載誌:Drug Metabolism and Disposition 
掲載日: November 22, 2022
DOI: 10.1124/dmd.122.001045

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