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お知らせ

2021.1.15

成果

医薬品による治療効果や副作用発現の個人差に関与する薬物代謝酵素CYP3A4の遺伝的特性を解明

 当センター遺伝子創薬グループの平塚真弘准教授(東北大学大学院薬学研究科生活習慣病治療薬学分野、東北メディカル・メガバンク機構及び東北大学病院兼任)、当センター副センター長の木下賢吾教授(東北メディカル・メガバンク機構副機構長)、ならびに東北メディカル・メガバンク機構ゲノム解析部門の、斎藤さかえ講師、三枝大輔講師、及び当センタークリニカルフェノームグループ菱沼英史助教(東北メディカル・メガバンク機構兼任)らの研究グループは、東北大学東北メディカル・メガバンク機構が公開する「日本人全ゲノムリファレンスパネル4.7KJPN」を利用して、薬物代謝酵素CYP3A4の40種類の遺伝子多型について、酵素機能に与える影響とそのメカニズムを解明しました。

 CYP3A4は臨床現場で用いられる30%以上の医薬品の代謝反応を触媒する重要な酵素です。これまでに、CYP3A4には多くの遺伝子多型が報告されており、特に一塩基多型に由来するアミノ酸置換型バリアントは、タンパク質の立体構造変化による著しい酵素機能の変化が、薬物動態に影響することで薬効や副作用発現の個人差の原因となることが分かっていました。したがって、CYP3A4遺伝子多型に由来するバリアント酵素の機能を詳細に解析し、それらの特性情報に基づいた医薬品の選択や投与量設計が重要となります。

 近年、東北メディカル・メガバンク機構による大規模な日本人集団の全ゲノム解析によって、これまで見落とされてきたCYP3A4遺伝子多型が多数同定されました。これらの低頻度遺伝子多型の中には、日本人集団特有の薬物体内動態変動を予測する遺伝子多型マーカーが存在する可能性があります。そこで本研究では、日本人4,773人の全ゲノム解析で新たに同定された11種類を含む40種類のCYP3A4遺伝子多型について、それらが薬物代謝に与える影響を遺伝子組換え酵素を作製して網羅的に機能解析しました。

 その結果、CYP3A4遺伝子多型の9種類で催眠鎮静剤ミダゾラムに対する代謝活性が消失し、15種類で顕著に低下することを明らかにしました。特に今回、日本人集団で新たに同定された遺伝子多型の3種類でCYP3A4活性が完全に消失することが明らかになりました。したがって、これらの多型を有するヒトでは、通常の薬物動態とは異なる挙動を示し、医薬品の効果が強くあらわれすぎたり、副作用が起こりやすくなる可能性があります。本研究により、遺伝子多型情報を利用することで、患者個々に最適な医薬品の種類や投与量を決定する安全かつ効果的な未来型医療の臨床応用実現の推進が期待されます。

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 本研究は、文部科学省ならびに日本医療研究開発機構(AMED)の下記の事業により行われました。
○ゲノム創薬基盤推進研究事業
「網羅的生体情報を活用したゲノム診断・ゲノム治療に資する研究:ファーマコゲノミクスにより効果的・効率的薬剤投与を実現する基盤研究」、課題名「健常人バイオバンクを活用した薬物代謝酵素遺伝子多型バリアントの網羅的機能変化解析による薬物応答性予測パネルの構築」(JP20kk0305009)
○東北メディカル・メガバンク計画(東北大学)東日本大震災復興特別会計分(JP20km0105001)
○東北メディカル・メガバンク計画(東北大学)一般会計分(JP20km0105002)
○文部科学省先端研究基盤共用促進事業

書誌情報

タイトル:Functional characterization of 40 CYP3A4 variants by assessing midazolam 1′-hydroxylation and testosterone 6β-hydroxylation
著者名:Masaki Kumondai, Evelyn Marie Gutiérrez Rico, Eiji Hishinuma, Akiko Ueda, Sakae Saito, Daisuke Saigusa, Shu Tadaka, Kengo Kinoshita, Tomoki Nakayoshi, Akifumi Oda, Ai Abe, Masamitsu Maekawa, Nariyasu Mano, Noriyasu Hirasawa, Masahiro Hiratsuka
掲載誌:Drug Metabolism and Disposition
掲載日:Dec 31, 2020
DOI:10.1124/dmd.120.000261
論文はこちらからもダウンロードいただけます。

関連リンク

東北大学大学院薬学研究科 生活習慣病治療薬学分野
東北メディカル・メガバンク機構
東北大学病院 薬剤部

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