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2021.9.7

ニュース

分子構造までクッキリ!- 世界最先端のクライオ専用300kV透過型電子顕微鏡を稼働 疾患発症メカニズムの解明や創薬に貢献 -【プレスリリース】

【発表のポイント】
・世界最先端のクライオ専用300kV透過型電子顕微鏡を導入し、2021年9月から本格稼働します。
・導入されるクライオ専用透過型電子顕微鏡は世界最高レベル約2Åの分解能を有し、多様な生体高分子の構造解析が可能です。
・東北メディカル・メガバンク計画により併設されているスーパーコンピュータを活用することで、電子顕微鏡によるデータ取得後の構造解析が可能です。
・企業やアカデミアの利活用を積極的に受け入れ、創薬等最先端の生命科学を支援します。

【概要】
 これまで東北地方にはクライオ専用透過型電子顕微鏡がなく、詳細な分子構造の観察を必要とする研究者は、装置が設置された他の地方の研究機関まで出向いて試料観察を行う必要がありました。
 今回本学が東北地方で初めて導入した300kV電界放出形クライオ電子顕微鏡(CRYO ARMTM 300 II、日本電子製2021年1月発売)は、未来型医療創成センター(INGEM)により、2021年9月から本格稼働されます。世界最高レベル約2Åの分解能で多様な生体高分子の構造解析が可能となり、また、東北メディカル・メガバンク計画で設置されたスーパーコンピュータにより測定データの構造解析が可能です。
 本装置は本学学内だけではなく、学外の企業・研究機関等からの利活用も積極的に受け入れます。東北地方でも多様な生体高分子の構造解析が可能となることで、構造情報に基づく疾患発症メカニズムの解明や創薬の実現が期待されます。

【詳細】
●クライオ電子顕微鏡法と今回導入された装置の位置づけ
 クライオ電子顕微鏡法とは生体試料を急速凍結しガラス状の氷に閉じこめ、透過型電子顕微鏡を用いて直接観察する手法で、画像処理と組み合わせることで、生体高分子複合体の立体構造を高い分解能で知ることができます。この革新的な技術は生命科学や創薬研究の分野に大きな影響をもたらしており、開発に貢献した3名の研究者に対して2017年にノーベル化学賞が授与されています。
 この度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業 創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS、https://www.binds.jp/)の支援を受けて、クライオ専用のハイエンド透過型電子顕微鏡が本学に設置されました。なおAMED-BINDSはライフサイエンス研究の成果を医薬品等の実用化につなげることを目的とした事業です。
 今回導入されたクライオ専用の電界放出形透過型電子顕微鏡は、加速電圧300kVクラスの最新式の装置で、直接電子をカウント可能な高精度の検出器(GATAN社製 K3TM直接検出型カメラ)を搭載しています。そのため、高分解能な生体分子の画像を自動測定により高効率に取得することができます。ウイルスなどの大きな分子から小さなタンパク質に至るまで、創薬の標的となる生体試料の構造を原子分解能で決定することが可能です。また従来の装置と比較して高速に画像データを取得することができるため、より短時間で構造決定に必要なデータを取得することが可能となります。

●本装置設置により期待される成果
 クライオ電子顕微鏡法はタンパク質複合体のような高分子量の分子や、膜タンパク質など結晶化しにくいタンパク質の立体構造解析に特に大きな威力を発揮します。クライオ専用の透過型電子顕微鏡はすでに全国に20台程設置されていますが、今回導入した装置の大きな特長が東北メディカル・メガバンク計画により設置されたスーパーコンピュータとの連携です。画像データの取得と解析がワンストップで実施可能であり、効率的に構造解析結果が得られます。さらに天然変性タンパク質や相互作用解析を得意とするNMR法と連携し、相補的に活用することで、自然界に存在する多種多様なタンパク質に対応した構造解析が可能となります。多種類のタンパク質をさまざまな切り口で、かつ詳しく観察することにより、これまで明らかにできなかった構造を解き明かし、東北の地から創薬研究や医学生物学研究の発展に大きく貢献することが期待されます。

●本装置の利用方法
 本装置はAMED-BINDSの支援を受けて設置された装置で、学内外の研究者や産業界の利用を広く受け付けます。基本的にAMED-BINDSの支援サービス窓口である「ワンストップコンサルティング・支援窓口」(https://www.supportbinds.jp/)からお申し込みいただく形になります。この窓口を経由する場合、成果の公開が前提となりますが公開を希望されない利用者向けに成果占有枠も設けています。利用料金に関しては、INGEMウェブサイト内のクライオ電子顕微鏡利用案内ページ(https://www.ingem.oas.tohoku.ac.jp/cryoem/)の利用料金表をご覧ください。

今回導入されたクライオ専用の透過型電子顕微鏡

プレスリリース詳細

 

 

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