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2024.2.13

成果

植物リボソームの栄養濃度の感知機構を解明した横山助教らによる研究成果がNature chemical biology誌に掲載

当センターの横山 武司助教(生体高分子構造解析グループ)と、東京大学大学院農学生命科学研究科、理化学研究所の研究グループは、構造学的、生化学的解析から、AUG-stop配列を介した植物のホウ素に応答した翻訳開始制御の新しい仕組みを明らかにし、Nature chemical biology誌に掲載されました。
この仕組みを通じて植物は土壌からの栄養の吸収を制御し、正常な生育を維持しています。

 

植物の成長や作物生産には土壌の栄養が不可欠ですが、土壌の栄養濃度は植物にとって適切とは限りません。不適切な栄養条件に置かれた植物は不足する栄養をより良く吸収するために、栄養素を根に取り込むための輸送体の数を増加させたりします。植物が輸送体の蓄積量を栄養条件に応じて増やすためには、栄養条件を感知する必要があります。これまでの著者らの研究で、植物の栄養素の一つホウ素を吸収するための輸送体の蓄積を増やすために、細胞内のタンパク質合成工場であるリボソームが、細胞質のホウ素濃度を感知するセンサーとしてはたらき、特定のタンパク質の合成量を変化させることがわかっていましたが、その仕組みは明らかにされていませんでした。
今回、研究チームは、東北大学INGEMに導入された最先端のクライオ電子顕微鏡装置を駆使して、世界に先駆けて、ホウ素によりリボソームが停滞する様子を高分解能で可視化しました。ホウ素を与えたリボソームの分子構造解析や生化学的な解析を通じて、ホウ素がリボソームの挙動を変化させ、それによって輸送体タンパク質の合成量を制御していることが明らかになりました。

 

本論文は、2024年1月24日にNature chemical biology誌に掲載されました。

 

論文情報

タイトル:Boric acid intercepts 80S ribosome migration from AUG-stop by stabilizing eRF1

著者名::Mayuki Tanaka#, Takeshi Yokoyama#, Hironori Saito#, Madoka Nishimoto, Kengo Tsuda, Naoyuki Sotta, Hideki Shigematsu, Mikako Shirouzu, Shintaro Iwasaki*, Takuhiro Ito*, and Toru Fujiwara*
#共同第一著者
*責任著者

掲載誌:Nature chemical biology

掲載日:  January 24, 2024

DOI: 10.1038/s41589-023-01513-0

 

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東北大学 生命科学研究科 応用生命分子解析分野