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お知らせ

2023.8.29

成果

INGEMのクライオ電子顕微鏡を用いて出された研究成果がNature Communications誌に掲載されました

 当センターで導入しているクライオ電子顕微鏡を用いた、東北大学多元物質科学研究所の研究グループによる研究成果がNature Communications誌に掲載されました。

 

 亜鉛は全ての生物において必須の微量金属イオンであり、分子レベルではタンパク質の立体構造形成や酵素の触媒機能、細胞や個体のレベルでは、遺伝子発現の制御、正常な成長、生殖機能、健康維持において重要な役割を担っています。東北大学多元物質科学研究所のHan Ba Bui学術研究員、渡部聡助教、稲葉謙次教授らの研究グループは、これまで、ゴルジ体に局在して亜鉛を運ぶ分子である亜鉛トランスポーターZnT7やZnT5/6, ZnT4が、ゴルジ体における亜鉛濃度を厳密に制御していることを明らかとしてきました。しかし、これら亜鉛トランスポーターの立体構造は未決定であり、亜鉛輸送の詳細なメカニズムは未解明でした。

 今回、同研究グループは、クライオ電子顕微鏡単粒子解析を用いて、亜鉛トランスポーターZnT7の立体構造を2.2Å分解能という高分解能で構造決定することに世界で初めて成功しました。

 さらに、亜鉛を放出する直前および直後の立体構造を捉えることにも成功し、亜鉛輸送の一連のステップのほぼ全ての可視化に成功しました。亜鉛トランスポーターファミリーの一般的な分子機構の解明につながることが期待されるばかりか、細胞内の亜鉛恒常性維持機構に関する理解が格段に進みました。

 

 本論文は、2023年8月8日にNature Communications誌に掲載されました。

 

論文情報

タイトル:Cryo-EM structures of human zinc transporter ZnT7 reveal the mechanism of Zn² uptake into the Golgi apparatus

著者名:Han Ba Bui, Satoshi Watanabe, Norimichi Nomura, Kehong Liu, TomokoUemura, Michio Inoue, Akihisa Tsutsumi, Hiroyuki Fujita, Kengo Kinoshita,Yukinari Kato, So Iwata, Masahide Kikkawa, Kenji Inaba

掲載誌:Nature Communications

掲載日:  August 8, 2023

DOI: 10.1038/s41467-023-40521-5 

 

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