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お知らせ

2025.6.16

成果

上皮性卵巣がん患者の経時的な血漿中メタボローム及びプロテオーム解析による治療モニタリングバイオマーカー開発に関する論文が掲載

当センターの菱沼 英史助教(クリニカルフェノームグループ)、島田 宗昭教授(クリニカルバイオバンクグループ)、および東北大学大学院医学系研究科の重田 昌吾准教授(婦人科学分野)らの研究グループは、上皮性卵巣がん患者の血漿を用いたメタボローム解析及びプロテオーム解析を実施し、代謝物及びタンパク質の経時的なプロファイリングが治療のモニタリングに有用である可能性を示しました。

上皮性卵巣がんは、患者の半数以上が進行した状態で診断され、その治療成績や予後は必ずしも良好ではありません。CA125は上皮性卵巣がん患者において高頻度で陽性となる腫瘍マーカーであり、治療効果をモニタリングするためのマーカーとして使用されています。しかし、CA125は子宮内膜症や炎症などの良性疾患の影響を受ける可能性があり、臨床におけるバイオマーカーとしては一定の限界があるため、より信頼性の高いバイオマーカーの確立が求められています。

本論文では、再発症例を含む7名の上皮性卵巣がん患者から経時的に採取された血漿検体を用いて、質量分析法による標的メタボローム解析及びショットガンプロテオーム解析を実施し、血漿中の代謝物やタンパク質の変化と治療効果との関連を評価しました。その結果、化学療法抵抗性を示す時点において14種の代謝物と46種のタンパク質マーカーが大きく変動することを見出しました。また、これらのマーカーの中にはがんの増殖や進行に関与する生体内分子も含まれており、患者の臨床経過を反映する挙動が認められました。本研究の成果は、上皮性卵巣がん患者の血漿中代謝物及びタンパク質の経時的モニタリングによる評価が、がんの再発や治療効果予測に有用なツールの一つであることを示唆しており、今後、患者一人ひとりの病態に合わせた最適な個別化医療への貢献が期待されます。

 

本論文は、2025年6月6日にInternational Journal of Molecular Sciences誌の電子版に掲載されました。また、東北大学2025年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業の支援を受け、Open Accessとなっています。

 

書誌情報

タイトル:Sequential plasma metabolome and proteome analyses to develop a novel monitoring strategy for patients with epithelial ovarian cancer: a pilot study

著者名:Eiji Hishinuma, Shogo Shigeta, Naomi Matsukawa, Yasunobu Okamura, Ikuko N. Motoike, Takamichi Minato, Yusuke Shibuya, Jun Yasuda, Kengo Kinoshita, Seizo Koshiba, Muneaki Shimada*

*責任著者:東北大学未来型医療創成センター 教授 島田宗昭

掲載誌:International Journal of Molecular Sciences

掲載日: June 6, 2025

DOI: 10.3390/ijms26125435