INGEMの電子顕微鏡を用いた構造解析により植物K⁺チャネル「AKT5」の活性化機構を解明した論文が掲載されました
当センターで導入しているクライオ電子顕微鏡を用いた、東北大学大学院工学研究科の魚住 信之教授ら研究グループによる研究成果が、Science Advances誌に掲載されました。
植物にとって重要な栄養素であるカリウム(K)は、K⁺チャネルと呼ばれるタンパク質を介して細胞内外へ輸送され、植物の成長や光合成などさまざまな生理機能に関わっています。モデル植物シロイヌナズナには9種類の主要なK⁺チャネルが存在しますが、そのうちAKT5については、遺伝子の存在が知られてから30年以上にわたり、K⁺を輸送する機能や植物体内での役割が明らかになっていませんでした。
本研究では、AKT5のK⁺輸送活性の検出に初めて成功し、特定の酵素によるリン酸化によってAKT5が活性化され、K⁺を細胞内へ取り込むことを明らかにしました。さらに、クライオ電子顕微鏡を用いてAKT5の分子構造を解析した結果、通常は不活性な構造をとっているAKT5が、リン酸化に伴って構造を変化させ、K⁺を輸送できる状態へと切り替わる仕組みが明らかになりました。
また、植物体におけるAKT5の働きを調べたところ、AKT5は葉と茎をつなぐ「葉柄」に集中して存在しており、AKT5を欠損させた植物では葉柄が短くなることが分かりました。さらに、植物を密植した条件では、AKT5欠損株の成長が通常の植物よりも低下しました。これらの結果から、AKT5は葉柄の細胞へのK⁺取り込みを通じて葉柄の伸長を促し、植物が密集した環境で効率的に光を獲得するための重要な役割を担うことが示唆されました。
今回の研究成果は、30年以上にわたって機能が不明であったK⁺チャネルAKT5の働きと、その活性化メカニズムを明らかにしたものです。今後、AKT5の活性制御メカニズムのさらなる解明により、農作物の生産性を維持しつつ高密度栽培を可能にする技術開発への貢献が期待されます。
本研究は、東北大学大学院工学研究科の魚住 信之教授が、当センターで導入しているクライオ電子顕微鏡の装置利用支援にお申込みいただき、成果として発展したものです。
書誌情報
タイトル:AKT5 is a bona fide potassium channel and controls petiole growth in Arabidopsis
著者名:Yuki Muraoka, Shunsuke Kobayashi, Lisa Oskam, Michihiro Tateyama, Ayumu Masago, Yoshikazu Tanaka, Takeshi Yokoyama, Tadaomi Furuta, Hinano Takase, Ellen Tanudjaja, Shota Terashima, Haruto Shimizukawa, Taro Yamanashi, Shunya Saito, Hiroki Ijima, Miyuki Tanaka, Atsushi Miyamoto, Megumi Kato, Kanane Sato, Masaru Tsujii, Taishi Umezawa, Francisco J. Quintero, Francisco Rubio, Jörg Kudla, Masaaki Ito, Yoshihiro Kubo, Yasuhiro Ishimaru, Ronald Pierik, and Nobuyuki Uozumi
掲載誌:Science Advances
DOI:10.1126/sciadv.aeh7630