2026.09.18 成果

INGEMが支援するクライオ電子顕微鏡を用いた研究の論文が掲載されました

当センターで導入しているクライオ電子顕微鏡(CRYO ARM™ 300 II)を用いた、東北大学および大正製薬株式会社の研究グループによる研究成果が、Biochemical and Biophysical Research Communications 誌に掲載されました。

本研究では、関節リウマチなどの炎症性疾患の治療に用いられる抗TNFα薬オゾラリズマブ(ozoralizumab: OZR)が、標的分子であるTNFαおよびヒト血清アルブミン(HSA)とどのように結合しているのかを、クライオ電子顕微鏡を用いて明らかにしました。

オゾラリズマブは、TNFαを標的とする人工NANOBODY®分子※であり、TNFαに結合する2つのTNF30ドメインと、血清アルブミン(HSA)に結合するALB8ドメインを有しています。これまでの研究から、オゾラリズマブがTNFαを強力かつ持続的に阻害することや、HSAとの結合によって血中での作用を長時間維持できることが示されていましたが、TNFα、オゾラリズマブ、HSAが形成する複合体の立体構造については、実験的には明らかになっていませんでした。

今回、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析により、オゾラリズマブの2つのTNF30ドメインがTNFα三量体に対して1:1の二価結合モードで同時に二価結合しつつ、ALB8ドメインがHSAに結合した三者複合体の立体構造が明らかになりました。

さらに、表面プラズモン共鳴(SPR)解析によって、この二価結合によるアビディティ効果がオゾラリズマブの高い結合能に寄与していることが示されました。オゾラリズマブのTNFαに対する結合親和性(KⅮ)は13 pMであり、単価のTNF30と比較して約20倍高い結合能を示しました。これにより、低い血中濃度においてもTNFαに対する強力かつ持続的な中和作用を発揮できると考えられます。

本研究は、クライオ電子顕微鏡によってオゾラリズマブがTNFαおよびHSAと形成する複合体の三次元構造を直接明らかにした初めての研究です。今回得られた構造的知見は、オゾラリズマブの高い結合能や持続的な治療効果を分子レベルで理解する上で重要な知見となるだけでなく、今後、より有効で持続的な作用を持つ次世代TNFα阻害薬の設計・開発にもつながることが期待されます。

本研究は、大正製薬株式会社と東北大学の研究グループが、当センターで導入しているクライオ電子顕微鏡を活用して実施したものです。

 

※ NANOBODY®はSanofiの関連会社であるAblynx N.V.の登録商標です。
  NANOBODY®化合物 オゾラリズマブはAblynx N.V.が創製しました。

 

 

書誌情報

タイトル:Cryo-EM elucidates the interaction mechanism of ozoralizumab, a humanized anti-TNFα NANOBODY® compound

著者名:Masashi Mima, Kyohei Sato, Takeshi Yokoyama, Chiemi Mishima-Tsumagari, Tatsuya Ohnuki, Yoshikazu Tanaka, Kunihiko Iwamoto

掲載誌:Biochemical and Biophysical Research Communications

掲載日:2026年3月6日

DOI:10.1016/j.bbrc.2026.153572

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